Tap Water II
XL Middleton
題は「水道水」。その続編です。高級な水ではなく、蛇口をひねれば出てくるほうの水。この名前の付け方に、この人のやっていることが要約されています。
モダン・ファンクという場所
XL Middleton はロサンゼルスの人で、MoFunk Records を拠点にしています。前作『Tap Water』からほぼ10年後に出たのがこの一枚で、前作はモダン・ファンクの古典として扱われている作品です。
モダン・ファンクは、80年代のブギーやエレクトロ・ファンクの語法を現在の機材でやり直す音楽です。シンセ、ドラムマシン、そしてトークボックスやボコーダー。懐古趣味に見えやすい場所ですが、この人の手つきはそこに留まりません。
タグは funk、g-funk、modern funk、boogie funk、Los Angeles。g-funk が入っているのが重要で、80年代のブギーと90年代のウエストコーストのヒップホップを地続きに扱っている。ロサンゼルスの人がやると、この2つは別のジャンルではなく同じ土地の連続した話になります。
曲名と長さ
- All Dogs — 4分12秒
- Where You Get Your Funk From? — 3分47秒
- Something In The Water (feat. Moniquea) — 3分49秒
- Catch You Off Guard — 3分35秒
- You Don't Have To Leave — 4分38秒
- I Can't Believe It — 4分2秒
- Right Fit — 3分58秒
- All My Days Are Better (With You) — 3分39秒
- Your Love Is Leading Me — 4分11秒
- Like We Used To Do (feat. Moniquea & I, Ced) — 4分38秒
曲名の並びが素直です。「Where You Get Your Funk From?」「All My Days Are Better (With You)」。ひねっていない。ファンクとブギーの歌詞は、もともとこういう直球で成立してきた語彙で、そこを現代風に屈折させない判断だと思います。
ゲストは Moniquea が2曲、10曲目に I, Ced。MoFunk の周辺で長く一緒にやってきた人たちで、外から呼んできた華やかさに頼っていません。
ほぼ全部ひとりでやる
- プロデュース・ミックス — XL Middleton
- マスタリング — Ivan Makvel
- ベース("You Don't Have To Leave")— Josh Solomon
- カバーイラスト — Foniks
生楽器のクレジットが1曲のベースだけ。あとは自分の機材で組んでいます。80年代のブギーは、実際には大人数のスタジオ・ミュージシャンで作られた音楽でした。それを一人で再現しようとすると、普通は痩せます。
痩せないのは、質感を似せることを目的にしていないからだと思います。あの時代の音を再現するのではなく、あの時代の考え方で今の機材を鳴らしている。だから安っぽい懐古にならず、蛇口の水のように普通に出てくる。
「Tap Water」という題は、そこまで含んだ自己申告だと受け取りました。特別なものを飲ませるつもりはない、毎日出しているものだ、という。10年後に続編を出せる人にしか言えない台詞です。
こんな時、聴きたいかも(個人的にね)
車の中がよかった。信号で止まっても気まずくならない音で、この手のファンクはそこが強い。テンポが一定なので、道が混んでいても腹が立ちにくい。
家だと少し行儀がよくなりすぎました。うちが狭いせいかもしれない。
出典
- MoFunk Records / Bandcamp — Tap Water II / XL Middleton(2024年6月7日リリース・全10曲と収録時間・ゲスト参加・前作からほぼ10年後の続編でありモダン・ファンクの古典とされていること・プロデュースとミックス、マスタリング、ベース、カバーイラストのクレジット・タグ)
- 出自
- ロサンゼルス
- レーベル
- MoFunk Records
- 収録
- Tap Water II
- 発表
- 2024年6月7日
- 出典
- https://mofunkrecords.bandcamp.com/album/tap-water-ii