Zustand
Spucke
9曲で、いちばん長い曲が4分1秒。5曲が2分を切っています。名前は Spucke——ドイツ語で「唾」。デビュー作です。
レーベルの紹介文が全部言っている
引用します。
Straight out of Hamburg's DIY underground, Spucke arrive with a debut album that spits in the face of boredom, convention and good taste.
ハンブルクのDIYアンダーグラウンドから出てきて、退屈と慣習と良い趣味に唾を吐くデビュー作。バンド名が「唾」で、その名前を動詞として使った紹介文になっている。
続きにこうあります。9曲すべてが「店のショーウィンドウに投げ込まれた瓶」のように感じられる、と。混沌として、危険で、完全に生きている。
宣伝文としては大げさな部類ですが、収録時間を見ると裏付けがあります。
- Uniform — 1分58秒
- Blut-Hirn-Schranke — 1分57秒
- The Armrest — 2分16秒
- Beton Verzeiht Nie — 1分50秒
- Warten — 1分40秒
- Aversion gegen Teile — 4分01秒
- Militär — 2分13秒
- Morbide — 1分44秒
- Zusammenbruch — 3分06秒
全9曲で21分たらず。 瓶を投げるのに時間はかからない、という作りです。
4人が歌う
構成として特筆すべき点が書かれています。歌う人が4人いる。 そしてドイツ語の曲と英語の曲が混ざっている。
これは編成の話であると同時に、政治の話でもあると思います。パンクのバンドは普通、一人のシンガーの声で像を作ります。誰が怒っているかがはっきりするからで、それが強さになる。
4人が歌うと、その像がぼやけます。代わりに出てくるのは、特定の誰かの怒りではなく、その場にいる複数人が同じことを思っている状態です。Zustand という題は「状態」を意味します。 個人の感情ではなく、置かれている状態の話をしている。4人で歌うのは題と整合しています。
曲名も個人の話をしていません。Uniform(制服)、Blut-Hirn-Schranke(血液脳関門)、Beton Verzeiht Nie(コンクリートは決して許さない)、Warten(待つこと)、Militär(軍隊)、Zusammenbruch(崩壊)。制度と身体と待たされることについての語彙で、一人称の恋や自分語りが一つもない。
「コンクリートは決して許さない」は、都市の言い方としてかなり良い題だと思います。
誰が録ったか
- 録音 — Spucke 自身、2025年11月
- ミックス・マスタリング — Will Killingsworth
- アートワーク — Dirt Merchant
- レイアウト — Jonathan Kopetzky
レーベルはドイツの La Pochette Surprise Records とイギリスの No Front Teeth Records。2カ国のインディーが共同で出す形です。DIY と紹介されているとおり、自分たちで録って、外に出す部分だけ人に任せている。
こんな時、聴きたいかも(個人的にね)
腹が立っている時に流したのがよかった。原因を思い出せなくてもいい。21分で終わるので、怒りが空回りする前に切り上げられる。
落ち着きたいときには最悪でした。当たり前ですが、念のため。
出典
- Bandcamp — Zustand / Spucke(2026年7月30日リリース・全9曲と収録時間・ハンブルク拠点・レーベルによる紹介文の全文・4人のシンガーとドイツ語と英語が混ざる構成・2025年11月に自分たちで録音したこと・ミックスとマスタリング、アートワーク、レイアウトのクレジット・La Pochette Surprise Records と No Front Teeth Records)
- 出自
- ハンブルク(ドイツ)
- レーベル
- La Pochette Surprise Records / No Front Teeth Records
- 収録
- Zustand
- 発表
- 2026年7月30日
- 出典
- https://lapochettesurpriserecords.bandcamp.com/album/zustand