Neurosonics Audiomedical Labs Inc.
Chris Cairns, Scratch Perverts, Foreign Beggars
監督Chris Cairns制作Partizan(Darkroom)
映像監督の Chris Cairns は、人の声がレコードでスクラッチされているのを聞くと、昔からその人の頭がターンテーブルの上で回っているところを思い浮かべていた、と音楽映像のメディア Promonews が紹介しています。スクラッチは、レコードを手で前後に動かして音を擦る技です。2分42秒のこの短編は、その思いつきを形にしたものです。
Promonews はこの短編の舞台を研究所と書いています。説明欄の2行目は「Neurosonics Audiomedical Laboratory footage」(ニューロソニクス音響医学研究所の記録映像)で、題と同じ名前のドメインで作品のサイトも作られていました。
回っているのは誰か
説明欄には、参加した人の名前が大文字で並んでいます。
SCRATCH PERVERTS. FOREIGN BEGGARS. STIG. DR. SYNTAX. WILL CLARKE. WILL COHEN.
- Scratch Perverts … 1996年に Tony Vegas、Prime Cuts、DJ Renegade が組んだイギリスのターンテーブリスト(ターンテーブルを楽器として演奏する DJ)のチームで、DJ の世界大会 DMC のチーム部門で1999年と2001年に優勝しています
- Foreign Beggars … イギリスのヒップホップのグループ。この映像には MC の Orifice Vulgatron と Metropolis が出ています
- Stig(Stig of the Dump)と Dr. Syntax … どちらもイギリスのラッパーで、DJ Newborn と3人で Beer and Rap というクルーを組んでいます
- Will Clarke … ドラマー
- Will Cohen … 音響デザイナー
Foreign Beggars の Wikipedia の項には、ビートボクサー(口で打楽器の音を出す人)の Shlomo も映像に出ていると書かれています。Promonews の記事によると、撮影で回転台に座ったのは Foreign Beggars の面々で、Cairns がその回転を、あとから編集で Scratch Perverts のスクラッチに合わせています。
33回転の頭
頭の撮り方について、Cairns は映像デザインのメディア Motionographer にこう説明しています。
We shot the people spinning on turntables at 33.3rpm at high speed and then matched them to the turntables which were working with Serato.
(ターンテーブルの上で毎分33.3回転で回る人をハイスピードで撮って、Serato で動かしているターンテーブルに合わせた。)
Serato は、レコードの動きでパソコンの中の音源を操作する DJ 用の仕組みです。Promonews には、合わせ方にこだわった理由も載っています。
The head guys we shot at super high speed - the rotation of the heads really fits the movement of the record. To myself and other geek peeps that was supremely important. Because when you see Djing on film usually it makes me annoyed. I hoped it would work for people who actually do it.
(頭の人たちは超ハイスピードで撮ったので、頭の回転がレコードの動きにぴったり合っている。自分や、ほかのオタク仲間にとっては、それがとにかく大事だった。映画で DJ をしている場面を見ると、たいていいらいらするから。実際に DJ をやっている人に通じるものになってほしかった。)
Partizan の支えで35ミリ
同じ記事によると、制作会社 Partizan の支援で企画が動き出し、35ミリのフィルムで撮っています。思いついてから形になるまで、少なくとも18か月かかりました。合成と3DCG を使った低予算の作品で、視覚効果の多くはロンドンのポストプロダクション The Mill で作られています。業界誌 shots の記載では、制作会社は Partizan の一部門の Darkroom です。
プロデューサーは Partizan の Bonnie Anthony です。Will Cohen は自分のサイトで、音響デザインのほかに、Will Clark(表記は Cohen のサイトのまま)、Foreign Beggars、Scratch Perverts と一緒に音楽の制作を手伝い、技師の役で少しだけ出演もしていると書いています。
この音楽に曲名がついて、配信や盤で出たという記述は、Discogs と MusicBrainz、制作当時の記事を探した範囲では見つかりませんでした。
父への一行と、その後
説明欄の1行目は「This one's for my dad.」(これは父に)です。この一行について Cairns が説明した文章は、当時の記事と Will Cohen のサイトを見た範囲では見つかりませんでした。
説明欄の最後には、グッゲンハイム美術館と YouTube が2010年に開いた映像の公募展「YouTube Play」の最終候補に選ばれたとあります。
翌2010年2月、Cairns は Vimeo に「Neurosonics Live」を上げています。ホログラム投影で、ドラムを Will Clark、ターンテーブルを JFB、頭を Beardyman が受け持ったテストの映像で、ここにも Bonnie Anthony と Partizan Darkroom への謝辞があります。
出典
- YouTube — Neurosonics Audiomedical Labs Inc.(2009年8月22日公開・Chris Cairns のチャンネル・2分42秒・説明欄の「This one's for my dad.」、参加者の名前、「Produced by the exemplary Bonnie Anthony」、YouTube Play の最終候補の記載)
- Vimeo — Neurosonics Audiomedical Labs Inc.(2009年8月22日・Chris Cairns のアカウント・同じ説明欄)
- Promonews — BUG 15: Neurosonics Audiomedical by Chris Cairns(Wayback Machine)(2009年10月7日・声のスクラッチから頭が浮かぶという発想・Partizan の支援と35ミリ・少なくとも18か月・合成と3D・Scratch Perverts と Orifice Vulgatron、Metropolis・Foreign Beggars が回転台に座ったこと・「super high speed」の発言・The Mill)
- Motionographer — Neurosonics Audiomedical Labs Inc.(2009年8月25日・33.3回転とハイスピード撮影、Serato の発言・Scratch Perverts、Foreign Beggars、Shlomo、Will Clarke・音響デザイン Will Cohen・The Mill London)
- shots — Neurosonics Audiomedical Labs Inc.(2009年8月26日・制作会社 Darkroom・監督 Chris Cairns)
- Will Cohen — Neurosonics Audiomedical(2012年3月29日・音響デザインと音楽制作の手伝い・技師の役での出演・Partizan の Bonnie Anthony)
- Wikipedia — Foreign Beggars(2009年に Dr Syntax、Stig of the Dump とともに Scratch Perverts と組んだこと・出演者に Shlomo)
- Wikipedia — Scratch Perverts(1996年結成・Tony Vegas、Prime Cuts、DJ Renegade・DMC のチーム部門で1999年と2001年に優勝)
- UKHH — Dr Syntax Interview(Dr Syntax が Stig of the Dump、DJ Newborn と組んだ Beer and Rap のクルー)
- Vimeo — Neurosonics Live(2010年2月18日・ホログラムのドラムとターンテーブルのテスト・Will Clark、JFB、Beardyman・Partizan Darkroom への謝辞)
- 発表
- 2009年8月22日(YouTube と Vimeo で公開)
- 出典
- https://youtu.be/ukZCHX5ffEI