Didn't I
Darondo
1973年の8月に契約して、2晩で録って、シングル1枚を出して、それから30年いなくなった人の曲です。3分29秒。
2晩で全部録った
Darondo は本名 William Daron Pulliam。1946年10月5日、カリフォルニア州バークレー生まれ。1973年8月に、レイ・ドバードが持っていたバークレーのレーベル Music City と契約しています。
このとき自分で書いた曲を大量に持ち込んでいて、編曲はジョン・"アル"・タナー。録音は徹夜のセッション2回で終わっている。弦と管とキーボードは後から重ねたものです。
ところがドバードとの関係は早く切れてしまい、Music City から出たのは「Didn't I」の45回転1枚だけになりました。エース・レコーズの解説はドバードの側の事情を書いていますが、要するに長くは続きませんでした。
その1枚が地元のラジオでよくかかって、35,000枚売れています。
音は、うしろで弦が薄く鳴っていて、フルートが乗る。声はファルセットと低いほうを行き来しますが、どちらも同じ人です。
そしてその弦は、調子が外れています。 SF Weekly の追悼記事も「out-of-tune strings」と書いている。徹夜2回で録って、弦を後から重ねて、外れたまま出して、それが35,000枚売れて代表曲になった。
53年たっても直っていません。いま聴けるのも、外れたままのものです。ここが好きです ── 直っていたら、たぶん覚えていません。
白い車と、否定
服装と車の記述が残っています。白い毛皮のコート、蛇皮の靴、白のロールス・ロイス・シルバークラウド。ナンバープレートは DARONDO。
このころ彼が何で稼いでいたのかについては当時から推測が流れていて、本人は否定していました。裏づけのある話ではないので、ここでは推測のほうを採りません。
30年のあいだ
1970年代の後半に音楽から離れます。レーベルとの金のもつれが理由と書かれています。
そのあと何をしていたか。1980年代には地元のケーブルテレビで自分の番組を持っていて、『Darondo's Penthouse After Dark』と『Tapper the Rabbit』という2本。ロンドンとパリにいた時期があり、客船でギターを弾いてもいます。妻のプレムとは1980年代のフィジーで会っている。
最後に落ち着いた仕事は理学療法士と言語聴覚士でした。娘が2人。晩年はカリフォルニア州サクラメントに住み、2013年6月9日に心不全で亡くなっています。66歳。
掘り出したのは全部よその人
この1枚が知られていくところに、本人はほとんど関わっていません。
ロンドンの DJ ジャイルス・ピーターソンが BBC ラジオ1で「Didn't I」をかけ、2005年のコンピレーション『Gilles Peterson Digs America』に入れました。翌2006年、Ubiquity のソウル部門である Luv N'Haight が、残っていた録音をまとめて『Let My People Go』として出す。2011年には Omnivore が Music City のセッションぶんを『Listen to My Song』として出しています。
映像のほうでも使われました。2008年2月17日に放送された『ブレイキング・バッド』第1シーズン第4話「Cancer Man」で、冒頭のクレジットにかかる。2017年の HBO『ザ・ドゥース』第1シーズン第7話「Au Reservoir」では、最初の場面に流れます。
ヴィック・メンサの2015年の「Say I Didn't」は、この曲をサンプリングしています。プロデュースは No I.D.。同じ曲にオール・ダーティ・バスタードの「Got Your Money」も入っています。1973年のバークレーの弦と、1999年のニューヨークのフックが、1曲のなかで並んでいる。
聴いた時のこと
書きものの手を動かしながら再生しました。終わったときには一文字も増えていませんでした。
曲の側が止めに来ているわけではありません。3分29秒のどこかで、こちらが書く側から聞く側に回っただけです。どこで回ったのかは自分でも分かりません。
2回目は何もせずに聴きました。同じ3分29秒が、そちらのほうが短かったです。
出典
- YouTube — Darondo「Didn't I」(Ubiquity Records の公式チャンネル)(長さが3分29秒であること・概要欄に Luv N'Haight の『Let My People Go』収録と書かれていること・ヴィック・メンサ「Say I Didn't」でのサンプリングと、『ブレイキング・バッド』『ザ・ブラックリスト』『ザ・ドゥース』での使用が挙げられていること)
- Wikipedia — Darondo(本名 William Daron Pulliam・1946年10月5日にカリフォルニア州バークレーで生まれ2013年6月9日にサクラメントで心不全により死去したこと・「Didn't I」が1973年に Music City から出て約35,000枚売れ地元ラジオでよくかかったこと・1970年代後半にレーベルとの金銭上のもつれで音楽から離れたこと・1980年代のケーブルテレビ番組『Darondo's Penthouse After Dark』『Tapper the Rabbit』・ロンドンとパリでの滞在と客船でのギター・理学療法士と言語聴覚士になったこと・妻プレムと1980年代のフィジーで出会ったこと・娘がイシスとエンジェルの2人であること・ジャイルス・ピーターソンが BBC ラジオ1でかけ2005年の『Gilles Peterson Digs America』に収録したこと・2006年の Ubiquity『Let My People Go』と2011年の Omnivore『Listen to My Song, the Music City Sessions』)
- Ace Records — Darondo: Listen To My Song, The Music City Sessions(1973年8月にレイ・ドバードの Music City と契約したこと・自作曲を持ち込み編曲がジョン・"アル"・タナーだったこと・徹夜のセッション2回で録音したこと・弦と管とキーボードを重ねていること・ドバードとの関係が早く切れて Music City からは「Didn't I」の45回転1枚しか出なかったこと・白い毛皮のコートと蛇皮の靴、DARONDO のナンバープレートを付けた白のロールス・ロイス・シルバークラウド・当時流れていた推測を本人が否定していたこと)
- SF Weekly — R.I.P. Darondo, Forgotten Local '70s Soul Star Who Got One Last Taste of Fame(高いファルセットと低いバリトンを使い分けていること・フルートと調子の外れた弦が敷かれていること・数枚のシングルを出したあと30年姿を消し、レア・ソウルの収集家のあいだで名前が残ったこと)
- Wikipedia — Cancer Man (Breaking Bad)(第1シーズン第4話で2008年2月17日に AMC で放送されたこと・「Didn't I」が冒頭のクレジットで流れること)
- What-Song — The Deuce S1E7「Au Reservoir」(2017年の HBO『ザ・ドゥース』第1シーズン第7話の最初の場面で「Didn't I」が流れること)
- WhoSampled — Vic Mensa「Say I Didn't」(Darondo「Didn't I」とオール・ダーティ・バスタード feat. ケリス「Got Your Money」をサンプリングしていること・プロデュースが No I.D. であること)
- 出自
- カリフォルニア州バークレー
- レーベル
- Music City
- 収録
- Didn't I(シングル)
- 発表
- 1973年
- 出典
- https://youtu.be/PZqQT5904_U