Veilleuse 音楽の常夜灯

Live 2026 Sneak Previews

crystal distortion

曲名が「01-RWEBACK」「02-BACKWARDSOCK」「03-LETSFUTURE」と並んでいます。書き出したファイルの名前が、そのまま曲名として置かれている。

整えないで出す

説明文は一行です。「Sneak previews of 2026 live set」。2026年のライブセットの先出し、以上。

作品として体裁を整える工程を、ここでは通していない。ライブで鳴らす予定のものを、鳴らす前に、加工せずに置いている。曲名を付け直すこともしていないのは、そこに時間を使う意味を認めていないからでしょう。

7曲入りで、収録時間は次のとおり。

  • 01-RWEBACK20分47秒
  • 02-BACKWARDSOCK16分42秒
  • 03-LETSFUTURE16分47秒
  • 04-SOMETHINGLIKETHIS11分16秒
  • 05-UNIVERSALMERGE16分18秒
  • 06-LIFEISGREAT20分28秒
  • 07-LATINQUARTER14分37秒

合計で約1時間57分。1曲が11分から20分あって、いわゆる曲の尺ではありません。フロアで実際に起きる時間の単位でそのまま切られている。タグは hardtek、acid、hardtechno、そして Berlin。

トレーラーの中のスタジオから来た人

この構えの出どころは、経歴を見るとはっきりします。

Crystal Distortion は Spiral Tribe の中心にいた人です。Spiral Tribe は1990年代のイギリスのフリーパーティ・シーンを開いた移動式サウンドシステムで、古いトレーラーに機材を積み込んで Studio 23 という移動スタジオを作っていました。その常駐プロデューサーが Crystal Distortion と 69db。1991年から、ライブでの実験の最前線に立ち続けてきた人です。

1994年には Spiral Tribe が Network 23 というレーベルを立ち上げます。移動中の車内で録った音源も含めて、複数の別名義で作品が出された。彼らの音は free tekno と呼ばれるようになりました。

つまりこの人は、録音物を目的地にしたことが最初からない。スタジオが動く車の中にあった人にとって、音源は場所から場所へ運ぶ途中の状態にすぎない。「ライブセットの先出し」というこの一枚の位置づけは、30年以上前から変わらない仕事のしかたの続きです。

Bandcamp のアーティスト紹介文も一行だけ置かれています。

If you have never heard any Crystal Distortion, You have been hanging out in the wrong places

意訳すれば、聴いたことがないなら遊びに行く場所が間違っている。この人らしいと思います。

2時間を1本で扱う

配信の時代の設計とは逆をやっています。短く切って回転数を稼ぐのではなく、11分から20分の塊を7つ並べる。途中から入る余地を作らず、入ったら出られない長さにしてある。

acid の反復は、短く聴くと単調に感じます。長さがある分だけ、同じ音型が別のものに変わっていく。ここを削らないと決めているのが、この一枚のいちばんの主張だと受け取りました。

こんな時、聴きたいかも(個人的にね)

時計の代わりに使いました。20分の曲が終わるまでには何か進んでいるはずだ、という賭けで、締め切りの前夜に。

人がいる部屋では試していません。この音量とこの長さは、たぶん共有向きではない。

出典

出自
ベルリン
収録
Live 2026 Sneak Previews
発表
2026年4月15日
出典
https://crystaldistortion.bandcamp.com/album/live-2026-sneak-previews

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