Veilleuse 音楽の常夜灯

Fantasy

浅井健一

監督有馬尚輝

ベンジーが、明るいほうへ振った一枚。浅井健一のアルバム『OVER HEAD POP』のリード曲「Fantasy」です。

この曲が転機だった

アルバムは2024年10月9日リリース。本人がインタビューで、はっきり言っています。前作『CaramelGuerrilla』とは変えて「ポップな明るくてコミカルな自分を出そう」と考えた、と。そしてこの「Fantasy」ができたことで、アルバム全体の方向が決まった。「ああ、こういう感じで作ろうかな。全部こういう感じにしようかな」——制作の順番として、この曲が先に立っています。

ただし、明るいだけの曲ではありません。本人は歌詞に皮肉を込めたと語っています。世界で起きている不可思議な出来事に対する、開き直りと嫌味。ポップな音でそれをやるのが今回の趣旨、という理解でいいと思います。

もうひとつ、地味だけれど大きい話。今作では AJICO での活動を通じて得たサウンド・エンジニアリングの知識を使っている、と本人が明かしています。バンドの中で音がどう組み上がるかを知った人が、ソロで一人で組み直している。SHERBETS ではメンバーの相乗作用で自然にアルバムができるのに対して、ソロは「結構苦労する」とも言っています。この曲の軽さは、放り出した軽さではない。

MVについて

監督は有馬尚輝。映っているのは、浅井健一自身が描いたキャラクターたちです。カラフルでシュールな連中が、不思議な異空間を駆け巡っていく。

浅井健一は絵と詩の人でもあります。1990年から2000年までブランキー・ジェット・シティで活動し、現在は自身のレーベル SEXY STONES RECORDS を拠点にバンドとソロを並走させている。2025年秋には約3年ぶりの個展も開いています。MVで動いている絵は、余技ではなく本業のもうひとつの側です。

だから、この4分は「曲のプロモーション映像」というより、同じ作者の絵と音を同時に流している時間に近い。音だけでも成立します。ただ、絵が動いているところまで見ると、曲の輪郭が一段はっきりします。

音について

ギターの歪みが浅い。もっと潰せる人が、輪郭を残したまま鳴らしている。潰さないから、コミカルな方向へ抜けていく余地が残る。

声も絞っていません。張り上げず、笑いを含んだ距離で歌っている。本人が言う「開き直り」は、歌詞の内容よりこの声の置き方に出ています。

皮肉を、暗い音でやらない。

書けば当たり前のことが、30年以上やってきた人の手つきで出てくる。

これから

2026年5月から全国ツアー「GREAT SELECTION CIRCUS 2026」が始まっています。この曲が鳴る場面を想像しながら聴くと、また少し違って聞こえます。

こんな時、聴きたいかも(個人的にね)

昼に流したときがいちばんよかった。夜だと、この軽さが少し空回りする気がする。散らかった部屋で、片付けなり作業なり、手を動かしながら。

車でも合った。渋滞していなければ。

出典

レーベル
SEXY STONES RECORDS
収録
OVER HEAD POP
発表
2024年10月9日
出典
https://youtu.be/9vBPI00RigQ

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